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はじめに
こんにちは、長崎県対馬市で自動車整備工場『対馬モーターサービス』を営んでいる整備士です。いつもブログをご覧いただきありがとうございます。今回は「水素で走る車」である燃料電池車(FCEV)についてお話しします。
電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)のニュースはよく耳にしますが、水素自動車って実際どうなの?と気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は最新モデルの現状と、整備士目線でのちょっとディープな見解をまじえて解説していきます!
話題のクラウンセダンにもFCEVが登場
日本の自動車業界においても、少しずつですが燃料電池車(FCEV)の存在感が変化してきています。最近の話題で言えば、トヨタの「クラウン セダン」ですね。ハイブリッド車(HEV)と並んで、なんとFCEVモデルが設定されています。
クラウンセダンのFCEVモデルは、一充填での走行距離が約820km(参考値)を誇る素晴らしいスペックです。カタログモデルの価格(消費税込み)は「Z(燃料電池車)」が830万円、特別仕様車の「Z”THE 70th”(燃料電池車)」が855万円となっています。
東京都のような補助金が潤沢で、水素ステーションが密集しているエリアの販売店では、想定以上の購買層がいるようです。「ほぼ無音に近い静粛性を体験するとエンジン車に戻れない」という声も多いと聞きます。これだけの大柄な高級セダンが、水しか排出せずにスッと静かに走る姿は技術の結晶ですよね。
日本におけるFCEV普及の壁
一方で、日本経済新聞の報道によると、日本におけるFCEVの普及における「1万台の壁」突破は2040年前後になると見通されているとのことです。まだまだ本格的な普及には時間がかかるのが実情です。
自工会の佐藤恒治会長(トヨタ自動車副会長)も、まずは自動車業界から水素でビジネスモデルを作り、他分野へ広げるという意向を示しており、国内メーカーは長期戦の構えのようです。
最大の壁は、ズバリ「インフラ」です。ガソリンスタンドは減っているとはいえ全国どこにでもまだありますが、水素ステーションの数は限られています。
離島の整備士から見たFCEVの現在地
ここから少し整備士としての現場の感覚をお話しします。
対馬のような離島や地方で自動車整備工場を営む私からすると、水しか出さないFCEVは本当に素晴らしい技術だと思います。しかし、近隣に水素ステーションが全く無いため、正直なところ整備の現場では「まだまだ遠い未来のクルマ」という感覚なんですよね。同業者の知り合いと話していても、「水素の充填どうするん?」という話題に終始してしまいます。
また、FCEVは構造上エンジンを持たず、モーターで駆動します。つまり、私たち整備士が当たり前に行っているエンジンオイル交換や、ミッション周りの複雑なメンテナンスが根本から不要になるということです。
個人的な所感ですが、2040年前後とされる本格普及期までの間は、インフラの整った大都市圏から局地的にFCEVへの乗り換えが進むと推測されます。その結果、都市部と地方で乗っている「クルマの世代」が一時的に大きく開いていくことになるかもしれません。我々地方の整備工場がFCEVの修理や車検を日常的に扱うようになるのは、まだ先の話になりそうです。
今後の車選びにどう影響するか?
では、一般のドライバーの皆さんの「次の車選び」にどう響くのでしょうか。
もし、カーボンニュートラルな次世代車としてFCEVに興味を持たれた場合、真っ先に確認すべきは「ご自宅から日常的に通える範囲に水素ステーションがあるかどうか」です。これに尽きます。
都市部にお住まいで、ステーション問題さえクリアできれば、補助金の恩恵を受けつつ、究極の静粛性を持つ車を手に入れるチャンスとも言えます。一方で、地方在住で長距離移動も多い方は、今はまだハイブリッド(HEV)やプラグインハイブリッド(PHEV)の方が現実的な選択肢になるケースが多いでしょう。
まとめ
今回は燃料電池車(FCEV)の現状と、クラウンセダンを例にした都市部と地方の違いについて解説しました。
水素ステーションという強固なインフラの壁があるため、普及には時間がかかりそうですが、静粛性と環境性能の高さを武器に、着実に進化を続けています。将来、どんな駆動方式が主流になるにせよ、クルマの進化を見守るのは車好きとしてワクワクしますね。対馬でもいつか、普通に水素自動車の車検を受ける日が来るのを楽しみにしています。